事業再生の手法とは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

公開日:

更新日:

業績悪化により、事業再生を検討するケースも少なくありません。

先行きが見通せない中で、会社を存続させるべきなのか、それとも廃業したほうがよいのか判断がつきにくいといえます。

無理に事業を続けて倒産するより、一旦は現状を見直して再生することが大切です。

そこで、事業再生とは何を意味するのか、手法の種類とメリットやデメリットをわかりやすく説明します。

事業再生の手法とは

事業再生とは、事業を抜本的に改革し、これまで収益を上げられていない事業などを改変・再生させることです。

会社が倒産状態に陥ったときに清算する手続ではなく、収益力や競争力のある事業は残して、一部債務を免除してもらったり弁済期を繰り延べしたりなどの方法を取ります。

経営の継続が厳しいと感じている経営者でも、実際に会社が倒産すれば精神的ダメージを受けるだけでなく、債権者・取引先・従業員などにも迷惑をかけます。

そこで、ある程度の資金に余力があるのなら、黒字化に向けた再生計画を策定し、倒産回避を目指す事業再生も方法の1つです。

事業再生のタイミング

売上が減少し、収益を上げることが厳しい状態でも、事業再生に乗り出すべきか判断が難しいケースも見られます。

また、営業活動に奔走している場合や、資金繰りに追われている状況では、事業再生にまで目を向けにくくなります。

しかし、事業再生できる状態を越えてしまうと、後で黒字転換することは困難になるため、資金に余力がある段階で早めに検討しましょう。

具体的には、以下のタイミングで事業再生を検討するべきと考えられます。

  • 資金繰りに数か月余裕がある場合
  • 資金繰りが詰まる3か月~半年前

資金繰りに数か月程度は余裕があっても、今後の見込み予測で存続が厳しい場合は、本格的な事業再生に乗り出しましょう。

なお、倒産した後でも再起はできます。

ただし、選ぶ方法が重要となるため、次をポイントを押さえた上での検討が必要です。

  • 倒産するまで知人・友人・取引先などからの借入金や保証人になってもらった借入金には十分な手当をしておく
  • 連鎖倒産しそうな買掛先に対し十分な配慮をしておく
  • 事業を可能な限り毀損させないよう従業員の雇用を維持できるようにする

倒産後も再起を図るなら、今と同じ仕事をしていく可能性が高いと考えられます。

応援者が既存の取引先であるのなら、信頼をできる限り失わない配慮が必要です。

資金が完全に詰まる前の決断が求められるため、資金繰りが厳しくなる3か月~半年前には決断しましょう。

事業再生の種類

 

事業再生には、以下の2つの方法があります。

  1. 法的再生
  2. 私的再生

法的再生

法的再生は、裁判所が手続に介在します。

透明性や公平性が担保されることとなり、債権者にも法的拘束力を与えることが可能です。

ただし、予納金など費用が発生し、第三者にも法的手続を行っていることを知られます。

今後の取引に不安や懸念を抱かれやすいなど、経済的損失のリスクが高くなることは注意してください。

私的再生

私的再生は、裁判所を通さずに債権者と個別に交渉して手続を進めます。

迅速に手続を進めやすいことがメリットであり、再建計画や弁済計画なども柔軟な内容で立案し合意を得やすいといえます。

ただし、裁判所が関与しない分、手続の透明性が保たれにくく、債権者同士の公平性が問題であると認識されやすいことがデメリットです。

合意を得ることのできなかった債権者との間で重大な問題が生じるリスクもあることは留意してください。

法的再生と私的再生の違い

法的再生と私的再生は、裁判所を通すのか、それとも債権者と個別で手続を進めるのか、違いがあります。

そのため、以下の場合は私的再生を選ぶことが多いといえます。

  • 債権者数が少ないとき
  • それぞれの債権者と信頼関係が構築できているとき
  • 利害関係者との間で調整が取れやすい
  • 倒産していることを公にしたくない

以下のケースでは、強硬な債権者などの法的手続強行で、債権者間の公平性を保つことができなくなるリスクが高いです。

そのため、法的再生を頼ったほうが安心と考えられます。

  • 債権者や利害関係者の数が多いとき
  • 利害関係者との調整が容易に進まない

再建型の事業再生とは(法的再生)

 

法的再生は、次の2つに分けることができます。

  • 民事再生や会社更生などの再建型
  • 破産や特別清算などの清算型

事業再生の手続は再建型ですが、この場合、会社を存続させたままで負債を圧縮したり事業を改善したりなど再建を図ります。

再建型の事業再生を選べるのは、負債を整理することで事業黒字化が見込めるケースです。

再建型の事業再生には、次の3つがあります。

  1. 民事再生
  2. 会社更生
  3. 特定調停

民事再生

民事再生は、民事再生法に基づいて経済的に行き詰った中小企業などが利用する手法です。

現経営者の主導の下で、会社債権者など利害関係者多数の同意による再生計画を策定・遂行し事業再建を図ります。

会社更生

会社更生は、株式会社のみ利用できる強力な手続です。

経済的に行き詰った株式会社が、裁判所選任の更生管財人主導のもと、債権者など利害関係者多数から同意を得て更生計画を策定・遂行し事業再建を図ります。

比較的、規模の大きな会社などが利用する手続で、現経営者は会社から退くことが必要です。

特定調停

特定調停とは、簡易裁判所に申立てを行うことで債権者との間に立ってもらい、返済条件を話し合って支払負担を軽くするための手続です。

弁護士を依頼せず、裁判所に介在してもらいながら当事者同士の話し合いで解決できます。

清算型の事業再生(法的再生)

 

清算型の事業再生は、次のケースで選択することが多いです。

  • 再建型では黒字化が見込めない
  • 清算したほうが債権者に対し多く弁済できる

清算型の事業再生には、次の2つがあります。

  1. 破産
  2. 特別清算

破産

破産とは、会社の財産を整理・換価して債権者へ分配し、会社を清算するための法的手続です。

そのため、事業を継続することを目的とした手続ではありません。

なお、事業を存続させる場合には、事業譲渡などの手法を組み合わせて活用するケースもあります。

特別清算

会社法にもとづき行う清算手続が特別清算で、債務超過の状態に陥っている会社の再建に活用されており、債務超過でない会社の清算手続は通常清算と呼ばれます。

破産よりも手続は比較的容易にできることが特徴です。

また、特別清算という名称を耳にしたときのイメージは、破産よりもネガティブでないことがメリットともいえます。

再建型と清算型の選び方

法的再生による事業再生で、再建型と清算型のどちらを選ぶべきか迷ったときは、以下の条件を参考にしてください。

再建型の法的再生を選ぶ条件は次の2つです。

  • 過去の負債を圧縮することでキャッシュフローの黒字化が見込めること
  • 再建させたとき債権者に対する配当が現在清算させたときの清算配当を上回ること

対する清算型を選択する条件は、次の3つと考えられます。

  • 過去の負債を圧縮してもキャッシュフローの黒字化が見込めないとき
  • 税金や社会保険など滞納が多く再建の見通しが立たないとき
  • 再建させても債権者に対する配当が清算配当を下回るとき

再建型で事業再生が見込めないときは清算型を選ぶしかありませんが、破産を選択すれば法的再生のマイナス面が強く出るため注意してください。

法的再生のメリット・デメリット

 

法的再生は裁判所を通して行いますが、上記の再建型が事業再生の手続として利用されています。

資金繰り・経営状況・取引関係など、申立てを行う企業に応じた手続を選び、事業再生を図っていきますが、法的再生を選択するメリットとデメリットは以下のとおりです。

法的再生のメリット

法的再生では裁判所が介在するため、手続の透明性や公平性が担保されることや、債権者に法的拘束力があることはメリットです。

さらに、債権者による権利行使を一時的に禁止するため、以下のメリットでスポンサーとなる企業から支援も受けやすくなります。

  • 債権者の強制執行などで事業を継続させるために必要な資産の差し押さえを防止できる
  • 多数の債権者などが同意をし、裁判所が認可することですべての債権者から同意を得ることができなくても再建計画による再生を図ることができる
  • 事後的に否認や詐害行為を主張されるリスクがない
  • 届出されなかった債権は失効するため簿外債務の負担リスクがない

法的再生のデメリット

法的再生のデメリットは、以下の2つです。

  • 法的手続を行っていると公に知られ、イメージダウンや経済的損失、事業基盤の毀損といったリスクが発生する
  • 予納金や弁護士などへの報酬が発生する

倒産企業のマイナスイメージで、運営に悪影響を及ぼすことは避けられません。

取引を懸念した契約先を失う恐れもありますが、スポンサー企業が見つかれば新たな信用供与で取引関係を継続できる場合もあります。

私的再生による事業再生とは

 

私的再生では、裁判所は関与することがなく、債権者との個別の交渉で事業再生を図ります。

主に任意整理などの手続を利用し再生を図る手法であり、債務者との話し合いで和解できれば、事業再生への道が開かれます。

法的再生では倒産のマイナスイメージを社会的に認知させてしまいますが、私的再生では当事者同士のみが事業再生に向けた手続の事実を知ります。

事業価値の毀損を回避する目的で使われる手法であり、法的再生よりも債権放棄で事業を継続させたほうが多く回収を見込むことができる場合に利用されます。

なお、私的再生の条件は以下の2つです。

  • 債権者数が少なく公平性を保てるとき
  • 債権者との間で信頼関係が築けているため事業再生に協力してもらえるとき

金融機関を中心とした多数の債権者が存在する場合、私的整理ガイドラインに基づいて手続されます。

私的整理ガイドラインとは、平成13年に政府が緊急経済対策を受け採択したものであり、法的手続を使わず債権者と債務者の合意に基づいて債権放棄など行うための手続規定です。

法的拘束力はありませんが、再建に値する企業が私的再生するときの金融界・産業界・経営者間のコンセンサスとされています。

法的再生で多くの弁済が見込めないときには、債権者の合意を得ることができないため、私的再生による手法は困難と認識しておきましょう。

私的再生の特徴

私的再生は法的再生と違って、議決により債権者の権利に変更を加えることはできません。

債権者ごとに、個別交渉を行い、示談・和解により権利変更を行って事業を再生します。

以上により、私的再生の特徴として挙げられるのは次の4つです。

  1. 柔軟に取り組める
  2. 費用を軽減できる
  3. 社会的認知を回避できる
  4. 迅速に処理できる

柔軟に取り組める

私的再生は、それぞれの債権者と合意することにより事業再生を図る手続のため、柔軟に返済方法や条件など債務弁済計画を作成しやすいといえます。

費用を軽減できる

私的再生では裁判所を通さずに手続するため、裁判所に支払う予納金など費用がかからず、少ない費用で事業再生を図ることができます。

社会的認知を回避できる

法的再生では、申立てを行うと倒産した会社といったネガティブなイメージがつくことになりますが、私的再生では対外的に知られることはありません。

迅速に処理できる

債権者数が少ないときや、債権者数が多くても協力してもらえる場合には、法的再生よりも時間をかけずに事業再生を図ることができます。

私的再生による再建方法

私的再生では、それぞれの債権者と合意することで再生を図りますが、合意の上での決まりなどは特になく、次の流れで手続をします。

  1. 債務者が主要債権者に対し私的整理を申し出る
  2. 債務の支払いを一時停止してもらう
  3. 債務者企業や大口債権者を中心とした債権者委員会が再建計画を策定する
  4. 債権者との交渉で同意を得る

債権者が、債権を無税償却できない場合や、債権者の取締役株主に対して責任があるために債務免除には応じれない場合など、債権者からの同意は得られないと考えられます。

この場合、事業譲渡や会社分割など組織再編も含めた上で、法的再生である特別清算などの手続と組み合わせることが必要です。

なお、私的整理ガイドラインに基づいて債務免除できる場合や、サービサーに債権譲渡し無税償却するときなどは、法的再生は組み込まず事業再生を図ることができます。

法的再生と私的再生の選ぶ基準

 

私的再生は、法的再生よりも短い期間で手続できるメリットがある一方で、透明性が失われるデメリットもあります。

そのため、債権者が再建計画に同意してくれる条件に対して、再建の見通しが十分にあることを示さなければなりません。

原則、私的整理では債権者全員から合意を得ることが必要です。

法的手続を強行する債権者がいれば、債権者間の公平を図れなくなるため、法的再生を選ぶことになります。

事業再生における成功のポイント

事業再生を図っても、失敗すれば廃業や解散することになります。

そのため、成功率の高い手法を選び、成功に向けた対策や取り組みを行うことが必要といえます。

事業再生で成功するポイントは、次の6つです。

  1. 決意を固める
  2. 現状・原因を把握する
  3. 適切に計画を立てる
  4. 社内・社外と情報を共有する
  5. 事業の将来を見極める
  6. 支援機関を見つける

決意を固める

事業再生では一定の期間が必要であり、債権者との話し合いで精神的な負担も大きくなります。

成功するためにも、経営者自身が必ず事業を再生されるといった強い決意を持って臨むことが大切です。

現状・原因を把握する

事業再生において、法的再生と私的再生のどちらを選択するのか、法的再生を選ぶなら再建型と清算型のどちらを選ぶかなど見極めも重要です。

最適な対策を立てるためにも、会社の現状を正しく把握し、債務超過に陥った原因の洗い出しや分析を行いましょう。

適切に計画を立てる

事業再生の成功に向けたスケジュールをしっかり立てましょう。

スケジュール通りに手続が進まないケースも少なくありませんが、行き当たりばったりでは今後の見通しも立てられません。

たとえば、現状の把握とスポンサー企業の調査、債権者への対応にそれぞれ1か月ずつ時間を費やし、その後は事業再生計画に2か月かけるなどの期間を設定します。

計画を立てておくことで、ある程度の見通しが立てやすくなり、目標とする期間内に手続を完了させやすくなります。

社内・社外と情報を共有する

社内で情報を共有できるような体制を作り、債権者やスポンサー企業など社外との情報共有も行っておくことで、周囲から信頼を得やすくなります。

事業の将来を見極める

債権者に対し、できるだけ弁済を行うことは大切なことです。

ただし、目的は事業の再生のため、再建計画をしっかり立て、事業の将来を見極めることが大切です。

自社のみで再生できないときでも、M&Aなどを活用し、譲渡先の企業の経営資源を用いた再建が可能となる場合もあります。

事業再生に向けて選ぶ手法次第で、その後が変わると理解した上での適切な判断が必要です。

支援機関を見つける

事業再生では、資金繰りの悪化した自社を支援してくれるスポンサー企業や金融機関を見つけることが重要です。

ただし、スポンサー企業や金融機関が見つからなくても、政府系金融機関の日本政策金融公庫の事業再生支援資金制度など、事業再生に向けた資金調達制度も活用できます。

苦しい状態の会社を立て直すため、最適な資金調達方法を選ぶことも大切です。

事業再構築補助金の活用

 

中小企業庁では、経済社会の変化に対応するため中小企業などの事業再構築を支援する「事業再構築補助金」制度を設けています。

対象は、以下の思い切った事業再構築に取り組む中小企業などです。

  • 新分野展開
  • 事業転換
  • 業種転換
  • 業態転換
  • 事業再編

公募があったときにスムーズに申請できるように、内容を確認しておくとよいでしょう。

まとめ

売上激減や業績悪化などで資金繰りに行き詰り、事業を継続することすら危ういという企業も少なくありません。

資金が底を尽きるまで粘ることも立派な心意気ですが、支援者である取引先や金融機関、従業員などに迷惑をかけるとも考えられます。

早めに対応することで悪影響を最小限に抑えられても、実際には何から手をつければよいかわからないケースは少なくありません。

事業再生には、私的再生と法的再生など種類もあるため、補助金などの活用も検討しつつ、最適な手法を選択してください。